ヒーリングミュージック制作の一環として、ビートルズの曲からリラックス用に10曲を選んでアレンジしました。
ビートルズは1962年10月に「Love Me Do」でデビューしてから1970年4月の解散までの間にオリジナルアルバム13枚、213曲を発表しました。
この中からたった10曲を選ぶのはあまりに難しいのですが、
・リラックスアレンジに合いそう
・前期・中期・後期からバランスよく
・ジョン・ポール・ジョージの曲をバランスよく
という条件になるべく合致するように選曲し、ピアノバージョンやオルゴール・鐘の音(ついでに弾き語りver.も)で制作しました。
10曲カバーの音源と解説を記録しておきます。
Beatles ビートルズ リラックスベストセレクション|Dr.Chikaのリラックスメドレー
ビートルズ・ピアノ弾き語りメドレー【1】BlackBird/Yesterday/ForNoOne/Strawberry..他全10曲 精神科医Dr.ChikaのBeatles名曲カバー
Beatlesリラックス10曲セレクション:各曲の解説
[1]Michelle「ミッシェル」
1965年発売の6作目のアルバム「ラバー・ソウル」7曲目に収録されています。レノン=マッカートニーの作品でリード・ボーカルはポール。ビートルズの曲で唯一歌詞にフランス語が含まれ、メロディ・ラインもシャンソンに似ているとされます。特にポールの声色は曲によって様々に変化しますが、この曲では強めで太い声で歌っています。
(私が勤務する認知症老健で、布団の横にビートルズの写真を飾っている女性の利用者さんがいます。「何の曲が好きなの?」と聞くと、「ミッシェル」と言っていました。)
[2]Norwegian Wood(This Bird Has Flown)「ノルウェーの森」
こちらも「ラバーソウル」(2曲目)に収録されるレノン=マッカートニーの作品で、リード・ボーカルはジョンです。シタールはジョージが演奏しています。イントロ・アウトロのみ、シタールの音色を入れて編曲してみました。
[3]Black Bird「ブラック・バード」
1968年の「ザ・ビートルズ」(通称ホワイトアルバム・2枚組)の1枚目LPのB面3曲目(CDでは11曲目)の曲です。曲のイメージに合わせて声色を変えるポールが、この曲では脚色をつけない「そのまま」の声で歌います。この曲はアコースティック・ギターの曲ですが、ピアノでカバーしてみました。コード進行が複雑で、一音ごとにコードが切り替わっていきます。コードの流れは音が半音ずつ上がって行き、また下がって行くラインがあります。空を飛ぶことを学んでいるブラック・バードが、飛べそうで、飛べない..でももう飛べそうだ(最後には、きっと飛べた..)という様子をコード進行でも表現しているように感じます。ビートルズの曲では、歌詞の中で、実社会の様々な比喩が使われている場合が多くあります。この曲は、ポールの意図では「黒人女性の人権解放について歌った」ということだそうです。
[4]Strawberry Fields Forever「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」
1967年の14枚目のオリジナル・シングル曲です。「ペニー・レイン」とともに、両A面シングルとなっています。両曲とも、1967年のアルバム「マジカル・ミステリー・ツアー」に収録されています。「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」はジョンが、「ペニー・レイン」はポールが、故郷のリバプールにまつわる場所を曲にしました。
「ストロベリー・フィールド」は、リバプール郊外にある、戦争孤児院で、現在は閉鎖されています。イントロ部分に使われるフワフワした感じの特徴的な音色の楽器は「メロトロン」と言われる鍵盤楽器でポールが弾いていますが、当時の最新のテクノロジーを取り入れた背景があったそうです。この曲もイントロのみ、メロトロンを意識して音色を変えて編曲してみました。
[5]Something
今回の10曲の中では、唯一ジョージ・ハリスンの作品です。リード・ボーカルもジョージです。ジョージの作品でビートルズのシングルA面となった唯一の曲で、1969年に発表されたビートルズが最後に録音したアルバム「アビイ・ロード」の2曲目に収録されています。ビートルズの中でもジョン・ポールともにこの曲を大変評価しているそうです。ジョージは歌もギターもとても味のある演奏をします。カバーに際しては、味のあるギター・ソロを意識して、ギター・ソロの部分だけはギターの音色で編曲してみました。
[6]Here There And Everywhere
1966年のアルバム「リボルバー」に収録されるポールの曲です。ポールの自信作ともされており、ジョンも「リボルバーの中で一番好きな曲」と語っていたそうです。
[7]If I fell「恋におちたら」
1964年のアルバム「A Hard Day’s Night」(ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!)に収録される、レノン=マッカートニーの曲です。イントロなしで、ジョンのボーカルで始まり、出だしの部分を除いて、ジョンとボールが2人でハモったり、ユニゾンしたりして歌います。同じ歌詞でハモっていますが、ハモりのラインは2人のメロディが上下に同じように動く訳ではなく、一筋縄ではいかない絶妙さがあります。カバーでは、ハモりのラインをピアノでも強調してみました。
[8]For No One「フォー・ノー・ワン」
Here There And Everywhereと同様に、1966年のアルバム「リボルバー」に収録されるポールの曲です。こちらもジョンが「ポールの曲で一番好きな曲のひとつ」と絶賛するほどの、ポールのセンス溢れる曲ですが、レコーディングはポールとリンゴとフレンチ・ホルンのソロ奏者の3人で行ったそうです。後の「ホワイトアルバム」ではより顕著な特徴となっていきますが、このあたりからも、ビートルズの曲だからといっていつも4人がみんなで演奏しているわけではなく、曲のアレンジに必要がなければ参加しない、曲の音作りやイメージ優先の姿勢が伺えます。アレンジ面ではピアノが全面的に使われ、4分打ちでズン(左手)・チャッ・チャッ・チャー(右手)というコードの弾き方が特徴的です。今回の編曲では、ホルンでのソロ部分のみ、リコーダーの音色で合わせてみました。
[9]And I love Her
If I fell「恋におちたら」同様に、1964年のアルバム「A Hard Day’s Night」(ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!)に収録される、レノン=マッカートニーの曲です。実質的にはポールの曲で、演奏時もこの曲ではポールが真ん中に立って主役となります。リンゴが叩いているのは、ドラムセットではなく、ボンゴとクラベスです。曲調のバラエティ豊富なビートルズの曲ですが、誰もが知っている曲..となるとやはり「イエスタデー」とか「レット・イット・ビー」「ヘイ・ジュード」など、ポールのバラード系の曲があがることが多いです。この「And I Love Her」は、「イエスタデー」よりももっと前のビートルズ初期の時代に、ポールが書いたバラードです。
[10]Yesterday
最後は言わずと知れた名曲「イエスタデー」です。1965年のアルバム「ヘルプ」に収録されています。この曲は実質はポールが単独でかいた作品で、ポールが夢の中で浮かんだメロディをもとにコードを探り、完成させたそうです。ビートルズのコンサートでも「イエスタデー」は一度他の3人はステージ脇にはけて、ポールがアコースティックギター弾き語りで演奏しています。中後期以降のビートルズの曲はアレンジがより多彩化しますが、「ヘルプ」までは、ライブでも再現可能な、4人のバンドスタイルでの演奏をもとにした曲がほとんどで、この「イエスタデー」で始めて弦楽四重奏を取り入れました。この曲をきっかけに、若者の文化だったビートルズの音楽が、広く一般に評価され受け入れられるようになったと言われています。
リラックスカバーアレンジに際して
これまで書かせていただいたようなビートルズサウンドの魅力の中で、ピアノのカバーアレンジで再現できることはごく一部です。
しかし、たくさんあるビートルズの音楽の魅力でもっとも不可欠なものは何か、考えてみると、素晴らしいアレンジは洗練されたメロディがあって初めて加えられるものであることに気づきます。
そこで、主旋律がよく聞こえるシンプルな流れにしながら、その曲の要となるアレンジはできるだけ再現する形で、鍵盤で可能な範囲で、カバーしてみました。
編曲にあたっては、歌メロを強調するために、主旋律を3オクターブに分けてユニゾンさせ、聞き取りやすくしてみました。また、曲によってはイントロやソロでの特徴的な音色を加えて、再現してみました。
テンポに関しては、曲の雰囲気を保つため、原曲に近い形で再現しています。
そのため選曲に際しては、リラックスのためのテンポということで、ミドルテンポの楽曲の中から、比較的知名度が高いものを選びました。
改めて、ビートルズの曲の核となるメロディを聴いたり、あっさりしたアレンジのBGMとして流したいときなどに、ご活用いただければ幸いです。
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