【音楽療法新聞】 2020年9月
認知症専門床での個別音楽療法
私が勤務する認知症専門老人保健施設に入所されている認知症の重症者の方に、ヘッドフォンで個々の思い出の曲を聴いていただく個別音楽療法。
施行終了した方についての報告です。
Dr.Chikaの『音楽と認知症』(その8)~パーソナルソングが認知症患者の心を呼び覚ます【方法解説】施行開始! 徘徊をやめて聴いてくれた、歌詞を理解して話してくれた
個別音楽療法の報告5
匿名Eさん 90代後半/女性 認知症 (HDS-R1点)
【普段の様子】
歩行:寝たきり リハビリ参加:不可 自発語:なし 問題症状:活動性低下 意思疎通:不良
【好きな曲の情報】
なし
【反応が良かった聴取曲】
【聴く前の様子】
ベッドに臥床し閉眼している。時々目を開ける。
【聴いている時の様子】
歌詞の内容に反応し、「涙がこぼれるって」「ひとりぼっちで歩くだって」「高校三年生だって」などと話す。少し目が潤み目頭に手を当てている。スタッフを真似て手を叩いている。
個別音楽療法の報告6
匿名Fさん 70代後半/女性 アルツハイマー型認知症 (HDS-R3点)
【普段の様子】
歩行:自立 リハビリ参加:不可 自発語:なし 問題症状:徘徊 意思疎通:可
【好きな曲の情報】
なし
【反応が良かった聴取曲】
君といつまでも(加山雄三)・いつでも夢を(橋幸夫・吉永小百合)
【聴く前の様子】
徘徊している。ぼーっとしている様子。
【聴いている時の様子】
ところどころはっきりと歌っている。途中で他利用者が現れた時に、激しく笑った。曲が終わると「はぁ~よかった」と笑顔。目を閉じて口ずさんでいる。鼻をすすり悲しげな表情になることも。何度も目元を拭う。両手で顔を覆い泣き出しそうな表情。スタッフが「歌うのお上手ですね」と話すと「全然」と謙虚な返答あり。
個別音楽療法の報告7
匿名Gさん 60代後半/男性 若年性アルツハイマー型認知症 (HDS-R2点)
【普段の様子】
歩行:自立 リハビリ参加:不可 自発語:なし 問題症状:徘徊 意思疎通:可
【好きな曲の情報】
なし
【反応が良かった聴取曲】
【聴く前の様子】
徘徊している・カーテンを引っ張りながら外を見ている・無表情
【聴いている時の様子】
時々手を叩く(リズムとは関係なく叩いている様子)。「あ~あってなっちゃうよ」と言って突然笑う。「まぁ大体あれじゃないの?」などと発語が増える。突然、「10くらいあるよ!」と発言。「はーあ」と何度かため息。スタッフが「曲知ってましたか?」と尋ねると頷く。
*個別音楽療法は、認知症重症者のQOLの向上や問題症状の緩和を目的に、私が勤務する認知症専門老人保健施設での独自の取り組みとして実施しています。