精神科医Dr.Chikaの音楽制作所/Psychiatrist Dr.Chika's Music Laboratory

認知症・ビートルズ・楽曲制作についての雑記となります/Various things about dementia,Beatles,MusicMaking....

認知症の方への接し方

認知症の方への接し方はとても重要です。言葉かけ一つで、心理的な症状が良い方にも、悪い方にも、変化してしまうからです。

しかし、実はそんなに難しいものでもありません。

私たちの普段の会話と同じ部分と、少し違う部分を感じ取ることに

お役に立てれば幸いです。

認知症の方への接し方

重度の認知症の方々と接する時に、個人的に感じているポイントは

  • 楽しい気持ちになるようにする
  • 安心させてあげる
  • ユーモアを活用する
  • 近い距離で親身になって聞く
  • 口調が大事
  • 表情も大事
  • 聞こえずらそうだったら耳元で大きい声で話す

など、割と当たり前のようなことです。

私たちの普段の会話でも、

  • 少しの口調の違いによって、いい気持ちにも嫌な気持ちにもなる
  • ユーモアがあったら面白いので笑う
  • ちゃんと聞いてくれているかどうか伝わってしまう
  • 相槌がそっけないと嫌な気分になる

などというようなことはよくあると思います。

吐き捨てるようなぶっきらぼうな口調で話しかけられたり、無表情で機械的な相槌を打たれたら、嫌な気持ちになるのが普通だと思います。

逆に穏やかな口調でユーモアがあって面白ければ、笑って気分が良くなって、その後しばらくハッピーな気持ちになったりすることもあると思います。

それは認知症の方も同じです。

認知症の方では記憶障害の原因となる部位(海馬)の神経細胞が傷害されていても、感情の働きは保たれやすいと言われます。

実際の会話例

認知症専門床の様子です。

例えばつい昨日のことですが、女性の利用者さんが、トイレから戻ると、ズボンを上げて歩きながら、私の方を見て「先生、おしっこ!」と何度も言って近寄ってきてくれましたので、「私はおしっこではありません!笑」と言いました。するとニコニコと楽しそうにして、そのまま席に戻っていきました。

一般的な認知症の方への原則では「否定してはいけない」というものがありますが、

私たちの会話でも、否定することが逆にユーモアになったりすることもあるのと同じで、いつも原則どおりという訳ではないです。適度に親しみを込めて否定形のユーモアで返した方が、お互いに楽しい気持ちになったりするので、人によっては、こんな風にあえて否定系で返します。

人によって言葉や反応を変えることも、私たちの普段の会話においても当たり前のことだと思います。認知症の方と話す時でも、同じです。

ただし違うところがあるとすれば、背景に病気があることを念頭に置く必要があるということです。

例えば昨日は12月25日クリスマスでしたが、その話を持ちかけるとある男性利用者さんが「プレゼント買ってきてあげる。何がいい?ピアスでもネックレスでも、ブレスレットでも何でもいいよ!」と、言ってくれました。

この方は普段から現実離れをした会話(妄想様の発言)をよくする方なのですが、

それを否定したりして機嫌を損ねると、急に表情が険しくなって、独り言を始めたりなど、調子が悪くなってしまいやすい方でもあります。

差し障りのない範囲で、その人の想像している世界に、適度にのってあげることが大事です。なので例えば「ありがとう!ネックレスお願いしてもいい?」などと、答えます。実際には、利用者さんは一人で外出をすることはできず、お金の計算や買い物をすることもできないことが現状です。それでもそうやって答えて、その人の世界に少し合わせてあげるだけで、楽しい気持ちで満足をしていただけます。

こんな風に、日々の認知症の方との会話はとても楽しいです。